エンジンオーバーホールその他点検修理でお預かりしたA田さんショベル。
まずエンジンから分解していきます。
ヘッドボルトを少し緩めただけでオイルがダラダラ漏れてきました。
これは早速嫌な予感が致します。。。
オイルでベッタリなヘッドボルト。
どこからのオイル漏れか気になります。
写真ではわかりにくいですがオイルリターン穴周辺からヘッドボルト穴(右側)3個分までオイルがべったり。
ガスケットが古すぎてひび割れしていただけなのか、またはヘッドが激しく歪んでいるのか・・・
気になりますが現時点では気にせずどんどん分解していきます。
この車両、比較的近い過去にリアのみヘッドとシリンダーベースのガスケット交換されていたようなのですがリアのヘッドガスケットは丈夫なテフロンコート製・・・
フロントのガスケットより倍ほど厚みがあります・・・
更にベースガスケットもリアの方がフロントより倍以上ぶ厚い感じのガスケットでした。
ハーレーだとコレくらいのことでは何も不具合無いのかもしれないですが圧縮比など完全無視な荒技にちょっと驚きました。
タペットは4本とも新品に交換されていましたが結構な傷だらけで・・・
見ての通り油圧タペットです
が・・・
カムが。。。
この何とも男前なハイリフトなカム山は・・・
カムカバー外していきます。
ここのボルト1個緩めただけでパキッと嫌な音がしてカムカバーが右半分クランクケースから外れました。
結構な。。。歪み具合だと思います。
恐らくはカムカバーの歪みだと思うのでしっかり面研修正しておきます。
おぉ。。。
カムはやはりアンドリュースのAでした。
パンでこのカムだとヘッドのバルブ関係最悪な感じですがショベルでもこのカムが組まれてたほとんどの場合ヘッド内部のひどい損傷が予想されます。
こんなハイカムはエンジン各部の寿命を縮めるだけなのでJカムか純正Hカムに交換致します。
しかしこのカムで油圧タペットはだいぶ危険かと・・・きっとカム確認せずにタペットだけ交換されてたかと思われます。
この状態で「クランクは結構しっかりしてます、腰上だけオーバーホールしましょう」 とショップの方に言われてそれを信じて短期間で痛い目にあったお客様はもう何百人いたことか・・・
こんな触診でクランクの状態など把握できません。
むしろ状態悪く焼き付きかけているが故にガタが少なくしっかりしているような感じに思える場合も多いです。
今回のショベルもこの状態では全然OKレベルと言われそうな感じですがさてどうでしょう?
バラして確認致します。
ステーターローターを外したら・・・
見事にマグネットが全部取れちゃいました。
残念ながらこれは交換です。
原因は色々ですがスプロケットシャフトナットをインパクト使って乱暴に締めたり緩めたりしてるとこうなってしまうことが多いらしいので要注意。
クランクケースのシリンダーデッキ面、左右合わせ部かなりの段差です。
後ほど慎重に面研修正致します。
タペットスクリーン内部にゴミがびっしり詰まってしまってます。。。
基本的にここはしっかり組まれたエンジンでオイルタンク内部も徹底洗浄されていればゴミが詰ることもほとんどないのですが。。。
ゴミが詰ってたら洗浄したらOK。
では無く、エンジン内部やオイルタンク内部の良くない状態を心配することをお勧め致します。
で一気に飛んでクランク分解。
コンロッドベアリングのケージがフライホイールワッシャーにめりこんで取れません。
クランクピン抜きとったら何とフライホイールワッシャーごと取れました。
元々こんな状態の部品だったのかと思えるほど見事にケージとワッシャーが焼き付いて一体化しております。
このまま走り続けていれば近い将来ケージが粉砕し。。。とんでもないことになってたかと思われます。
と言うことでこんな状態でも先の触診では何も不具合無いように思えてしまったり。。。
クランクピンとベアリングの当たり面見てもベアリングがかなりピニオン側(右側)に寄っていたのがわかります。
コンロッドレースのラッピング状態が悪かったりするとこんな不具合を引き起こしてしまったりします。
タイミングホールのケース側、ネジ穴が完全に潰れて無くなっていたので修正致します。
そんなこんなで洗浄の準備完了です。
ヘッド関係は後ほどバラして確認後、改めてご報告致します。
続いてミッション確認していきます。
キック関係。
ギア等、すでに交換されている感じでこのままでOKですがキックシャフトとブッシュがガタガタだったためまずはブッシュ交換から予定しておきます。
クラッチのシェルとクラッチハブがびっくりするくらいガタガタです。
リテーナーで調整できるスラストのガタでは無くベアリングかハブが摩耗し過ぎている感じです。
クラッチハブとベアリングは要交換です。
スプロケットは23Tでした。
先日お伝えしたように25Tに交換致します。
それに伴いチェーンも要交換なのでご用意しておきます。
メインシャフトも1度交換されている感じですが・・・
押して引いてガタガタ・・・となってしまうのはかなり良くない感じです。
メインシャフトを押して引いてガタガタ動く場合はミッション分解修理することをお勧め致します。
ギアは全て状態悪くなくこのまま使用OKだと思いますが各部スラストがかなりガタ多いので分解して点検した後、修正致します。
メインドライブギアブッシュ内部におかしな縦傷が多数・・・
ココは回転する摩耗以外無いはずなので縦傷が入るのはおかしいです。
きっとブッシュ入れ替えてリーマー加工された時に失敗して傷だらけになった物だと思われます。。。
比較的まだ新しいと思われるメインシャフトですがメインドライブギアブッシュとの当たり面が酷く焼けて摩耗が酷いので交換致します。
ブッシュの内面仕上げが良くなかったのか、台湾製シャフトがやはり材質的に弱いのか・・・
先ほどのメインシャフトのガタの原因はこのベアリングのガタです。
このベアリングは回転には強いですが横方向の打撃にはものすごく弱いです。
と言うことで組んだりバラしたりする時にシャフトをハンマーで叩いたりしてはいけません。
そんなこんなでミッションも洗浄準備。
今回の交換部品はメインシャフト&カウンターシャフト、全てのブッシュ&ベアリング、スラストワッシャー各種他ガスケット、オイルシール等など。。。
参考までに・・・
この年式のミッションのオーバーホールは上記の部品交換と工賃で約15万円です。
車体の各部点検整備はまた後ほどに・・・